神がキリストを遣わすのは遅かったのではないか

　なぜ神はもっと早くキリストを遣わして人類を自分のもとに導かなかったのかという人がいます。古代イスラエルの国が滅んでから、キリストを遣わすまでになぜ神は何もしないで人類世界を眺めているだけだったのかと考えます。

　古代のユダ王国は西暦前七世紀に滅びました。そして、キリストが神により遣わされたのが西暦一世紀ですから、それまでの約六百年の間、何もしなかったのはなぜかと考えるわけです。　また、キリストの到来がもっと早かったなら、例えば、ノアの大洪水の前だったら良かったのにと考えるかもしれません。そのことについて考えてみましょう。

　まず、神はキリストが地上に到来した時、キリストを受け入れる人々が存在するように準備をする必要がありました。そのために時間を取られました。　また、その後、宗教がどのように進展したかを見てみると、結果的にキリストが遣わされた時期がグットタイミングだったと言えます。

　もし、キリストがノアの時代に派遣されていたらどうなっていたでしょうか。ノアは一生懸命宣教の業を行なったと考えられますが、それでも救うことができたのは、自分の家族八人だけでした。(創世記7:7)ノアの時代には、それだけ真の宗教を受け入れる準備が人類の側にできていませんでしした。

(noah)もしノアの時代にキリストが遣わされていたらキリストの追随者は非常に少なかったことでしょう

　キリストがノアの時代に派遣されても、キリストを受け入れる人はほとんどおらず、人々は罪を贖うメシアの必要性を認めず、メシアを受け入れなかったでしょう。　おそらく人類世界に与えるインパクトは小さく、メシアの追随者は集められず、キリストと共に支配する神の王国の成員も集められなかったでしょう。おそらく、キリスト教もその後ほとんど発展しなかったでしょう。

　ですから、キリストを受け入れる国民が存在することが必要でした。また、その国民はキリストの贖いの犠牲に対して信仰を働かせることが必要でした。

　そのために、神は準備をされました。西暦前16世紀に神はエジプトからイスラエル人を救い出し、ご自分を崇拝する国民を作り出されました。また、彼らにモーセの律法と祭司制度を与えました。聖書は、「律法は、わたしたちをキリストに導く養育係となった」と述べています。(ガラテア3:24)

palewire(mosaiclaw)モーセの律法は罪の許しのために贖いが必要であることを人々に教えました

　モーセの律法は、イスラエル人が罪を犯した時、罪の許しのために、動物の犠牲を要求していました。贖罪の日が制定されていました。過去一年に犯されたイスラエル人の罪の許しのために、大祭司によって動物の犠牲が捧げられました。(レビ16:29,30)

　このことは、罪の許しのために、犠牲が求められることを人々に理解させたでしょう。さらに、動物の犠牲は、人々の罪の許しを完全にもたらすことができなかったので、何度も繰り返しささげることが必要でした。(ヘブライ10:11)このことは、動物の犠牲以上のものが必要であることを人々に理解させました。(ヘブライ10:1,4,10,12)

　神が遣わされたみ子は、アダムと同じように完全な人間だったので、イエスの贖いの犠牲は、人々の罪を完全に取り去る法的根拠を備えることができました。(ローマ3:23,24)人類の罪を贖う完全な人間が必要とされることを人々が理解するために、モーセの律法の動物の犠牲や祭司制度が助けになりました。

(jesus29)人々はモーセの律法のゆえに罪の許しのために一人の完全な人が必要であることを知ることができました―キリストの到来の前にモーセの律法から学ぶ必要がありました

　

　さらに、そのような贖い主が神によって派遣されることを前もって告げることも必要でした。イザヤ書とダニエル書は、そのような罪のための贖いをメシアが備えることを預言していました。(イザヤ53:11,12。ダニエル9:24,27)また、ダニエル書はメシアが到来する時を予告していました。(ダニエル9:25)　これらの聖書の預言は、人々をメシアの到来に準備をさせました。そして、メシアが到来した時、メシアに敬意を払う人が存在したでしょう。

　それで、キリストが神によって地上に派遣された時には、メシアを待ち望む人々が存在していました。(ルカ3:15)それで、メシアを受け入れる準備のできた民が幾らか既に存在していたのです。聖書は、そうした律法や預言などに基づいて、バプテストのヨハネの到来は、「準備のできた民」を存在させることになったと述べています。(ルカ1:17)

　さらに、神はユダがバビロンから帰還した西暦前六世紀から、メシアの到来まで、五百数十年、待たれました。それは、ひとつには、世界の環境がキリスト教が広まるのに最適な環境になるまで、待っておられたと考えられます。

　キリストが到来した時、イスラエルの土地を含むローマ帝国が世界で覇権を振るっていました。それまで、ユダヤ人はローマ帝国の各地に散っていました。ユダヤだけでなく、各地にユダヤ教の会堂を作ってそこでエホバへの崇拝を行なっていたのです。　それで、キリスト教が宣べ伝えられた時に、諸国家に住んでいたユダヤ人たちは、キリスト教を宣べ伝える点で、拠点となりました。

　使徒パウロと他のクリスチャンはキリスト教を宣べ伝えた時に、まず各地のユダヤ人の会堂に行きました。(使徒13:14,15)そこには、ある程度キリスト教を受け入れ尊重する可能性のある人たちが存在していました。それらの人々の一部は、クリスチャンになり、キリスト教を広めました。

　　また、ローマ帝国では、共通ギリシャ語コイネーが普及して国際語として用いられていました。その言語もローマ帝国全体にキリスト教を伝えるための一助になりました。また、ローマ全体を旅行ができるように道路が整備されました。キリスト教を広める点で、いくらか好都合な状況が存在していたのです。

RomanEmpire under Augustus (31BC – AD 14). Yellow: 31BC. Dark Green 31–19 BC, Light Green 19–9BC, Pale Green 9–6 BC. Mauve: Client statesCristiano64 - Lavoroproprio, self-made (romanempire3)その当時ローマ帝国が支配していたことはキリスト教を広める上で助けになりました

　

　そして、完全に聖書に調和したキリスト教ではありませんでしたが、キリスト教はローマ帝国全体にさまざまな形で普及しました。

　そして、その後キリスト教は、ローマ帝国の一部であったヨーロッパ諸国が世界中に発展すると共に、世界の他の部分に広まりました。それらの諸国家は南北アメリカやアフリカにキリスト教を伝えて、キリスト教はそこである程度繁栄することになりました。

　中東では、その後イスラム教が起こりましたが、イスラム教の聖典コーランは、旧約聖書や新約聖書の記述をある程度認めていたので、それは聖書に敬意を払う点である程度助けになりました。　　

　それで、中東でも、キリスト教を受け入れている人が存在しています。それで、結果としてキリスト教は今日世界的な宗教になりました。

　それで、神が行われることは、それ相当の理由があります。神が一世紀にキリストを遣わされたことは、いろんな観点から考えてグッドタイミングだったのです。神は、キリストを遣わす点で、遅れたわけではなかったのです。

　実際キリストの到来がグッドタイミングであったため、今日のキリスト教の全部が神の基準に完全にかなっているとは言えませんが、それでも結果として、キリスト教は世界で最も大きな宗教グループになる程、成長しました。

　2012年の時点で22億人のクリスチャン、16億人のイスラム教徒、5000万人の仏教徒がいます。物質的な観点から言えば、キリストとマホメットはかなり成功しました。キリスト教より、何世紀も早く仏陀によって始められた仏教は、あまり成功しませんでした。ですから、キリストが到来したタイミングは、もっとも良いタイミングだったのです。

　ですから、神がキリストを遣わされたのは、遅くはなかったのです。神は、そのために準備をされ、結果が良くなる時期にキリストを遣わされたのです。