クリスチャンは国家や政党を設立すべきですか

　　ポーランド、アイスランド、アイルランド、ポルトガル、アメリカなどキリスト教国家と言われる国は世界に数多く存在しています。他にも、多くの国にクリスチャンのグループによって設立された政党も存在しています。

　では、クリスチャンは、国家を建設したり、政党を設立したりするべきでしょうか。

　過去に神の民によって構成される国家が存在していました。昔のイスラエルは、神とイスラエル人の契約により設立された国家でした。エホバ神は、イスラエル人にモーセの律法を与えました。モーセの律法では、祭司制度が規定されていました。

　当初、イスラエルに王はいませんでしたが、イスラエル人が神に王を求めたので、神はイスラエル人の中から王として支配する人を選ばれました。最初に、ベニヤミン部族のサウルが選ばれました。(サムエル第一10:24)後になって王権は、ダビデが受け継ぎました。そして、神はダビデの子孫が王になることを約束されました。(サムエル第二7:16)

　それで、イスラエルは当初、神から選ばれた世襲制の王と祭司たちを持つ国家でした。しかし、イスラエル人が神に従わなかったので、神はイスラエル人とのモーセの律法契約を廃棄されました。(ローマ10:4)そして、イスラエルの国家は、およそ1600年存続した後、西暦70年にローマ軍により滅ぼされました。

Catapultaby Edward PoynterPublicDomain　Edward　Poynter - http://prerafaelit.narod.ru/gal4/photo20.htm(jerusalem70)西暦70年にエルサレムはローマ軍によって滅ぼされて後神に選ばれた国家はなくなりました

　その時、エホバの神殿も破壊されました。その時、イスラエル人の家系の記録も失われたので、祭司の職を誰が受け継いだらいいのか、分からなくなりました。それで、モーセの律法を中心とした国家を再び建設することは不可能になりました。そして、今日、神と特別な契約関係にある国家は存在していません。

　　神は、マリアにマリアの子であるイエスがダビデの王国を永久に受け継ぐと予告されました。(ルカ1:31-33)イエスは、ただ一人のクリスチャンの指導者です。(マタイ23:10)　私は聖書の年代計算からイエスが王になる特定の時は分からないはずだと思います。(マタイ24:36)ですから、エホバの証人が、西暦1914年にイエスが天で王になられたという主張は、間違っていると思います。

　けれども、私たちは、イエスが王になられたことを地上に起きる出来事によって知ることができます。(マタイ24:32,33)私たちの周りで起きている戦争や自然災害などの出来事は、確かに、イエスが天で王になられたか、もしくは、天で王になられる時が近いことを示していると思います。ですから、エホバの証人の主張は間違っているといっても、当たらずとも遠からずだと思います。

　イエスが王になられると特定のタイミングをどのように識別できるのかは、さらに聖書の研究を進めていきたいと思います。それで、イエスは、すでに全世界の権威をエホバ神から与えられてるので、イエスの王権は、特定の国家のみに及ぶものではなく、あらゆる国と民族に及ぶと言えます。(マタイ28:19,20)ですから、この点からもクリスチャンは、特定の国家を設立することはありません。

SecondComing Jesus 20 by Waiting For The Word(jesus9)イエスの支配権はすべての国家に及ぶ天的なものなのでクリスチャンは特定の国家を設立することはありません

　そして、神がイエスを通して、あらゆる国民に弟子を作るようにクリスチャンに命じられたので、一世紀のクリスチャンはあらゆる国籍の人々で構成されることになりました。(マタイ28:19)それで、一世紀のクリスチャンは、特定の民族によって構成されていませんでした。

　一世紀のクリスチャンは、神から命じられた宣教と弟子を作る業を中心に忙しく励みました。ですから、クリスチャンは、自分たちの国家を建設するという企てに時間を割くことはありませんでした。一世紀のクリスチャンの宣教者であったパウロは、宣教に励んで各地にクリスチャンの弟子の会衆を作りました。パウロは、それらのクリスチャンに国家を建設するようにとは、命じませんでした。

　　なぜなら、パウロは「患難を経て、神の王国に入らなければならない」と仲間のクリスチャンを励ましました。(使徒14:21,22)神の王国とは、多くのクリスチャンが死んで後入るものです。クリスチャンは、死後天で王になります。ですから、彼らの生存中は、クリスチャンは王として支配することはありません。(テモテ第一2:11,12)

V&A- Raphael, St Paul Preaching in Athens (1515)PublicDomain

Raphael - RoyalCollection of the United Kingdom(paul1)パウロは宣教に力を注いだので国家を設立することはしませんでした

　ですから、パウロは各地のクリスチャンに自らを王とする国家を設立するようにとは勧めませんでした。かえって、その土地で設立されている上位の権威、つまり王たちや政治支配者に服するようにと勧めました。(ローマ13:1,2)

　そして、パウロは「権威に敵対する者は，神の取り決めに逆らう立場を取っていることになります。それに逆らう立場を取っている者たちは，身に裁きを受けます。」と述べました。　(ローマ13:2)

　それで、クリスチャンの政治支配者たちに対する態度は、基本的に相対的に服するということでした。もちろん、クリスチャンの真の支配者はエホバ神だったので、エホバ神に第一に従いました。神の崇拝と律法に関しては、国家が反対しても、第一に神に従いました。(使徒5:29)

　しかし、神の崇拝と神の律法に反しない限り、クリスチャンは政治支配者に従ったので、自分たちの国家を建設することも、自分たちの政党を設立して、国家に反抗することはありませんでした。

　しかしながら、権威に敵対するとかそれに逆らうとは、政府を倒すことをもくろんで、とりわけ武力を用いて既成の政府に対抗することを意味するでしょう。しかし、今日、憲法や法律で上位の権威に対して、自由に自分たちの意見を平和的に表明することは許されています。

　

　クリスチャンは、政治支配者たちとの問題が生じる場合、政治支配者にお願いするという行動をとりました。(使徒24:10)それで、一世紀のクリスチャンは、自分たちが直接政治に携わることはしませんでした。その代わり、宣教と弟子を作る業に励みました。(マタイ24:14)

　

　ですから、一世紀のクリスチャンの残した型からすると、クリスチャンは、自分たちの国家を建設することも、自分たちの主義を擁護するために、政党を設立することもしません。クリスチャンは、全世界に存在し、あらゆる国籍の人々でなっています。あらゆる国籍でなる人々が神とイエス・キリストに対する信仰で結び合わされます。(啓示7:9,10)