心的外傷後ストレス障害 の原因はストレスだけですか

　ある人々は、2011年3月11日の東日本大震災と津波と原発事故がトラウマになっています。地震と津波の状況を繰り返し思い出して、眠れない人もいます。また、その状況が繰り返し、夢の中に出てくる人もいます。また、その時期になるとイライラしたり、普通だったら耐えられるストレスに過剰に反応してしまう人もいます。

 

　 多くの人はそれは心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状だと言います。まず、今回は、PTSDがどのようなメンタルの問題なのか、PTSDの原因は何なのかを調べてみたいと思います。

 

〇PTSDの原因とされるストレス

 

　PTSDの原因としてのトラウマには次のようなものがあるとされています。

 

戦争

自然災害

自動車や飛行機事故

テロによる災難

愛するヒトの突然の死

強姦

人質

強盗による傷害

家庭内暴力

小児期における無視や放置、など

NPO標準医療情報センターhttp://www.ebm.jp/より転載

〇PTSDの症状とされるもの

 

　PTSDと診断されるおよそ三つの症状があります。

 

1.トラウマ後、不眠が続き、神経が過敏となり突然怒ります。集中力が欠如し、持続的な興奮状態、絶えずびくびくしてすぐびっくりしたりする状態です。

 

2.事件の前後の記憶を想起するのを回避しようとする傾向がでてきます。幸福感がなくなり、感情が鈍くなり、物事に対する興味や関心が減退します。その結果、建設的な未来像を描くことが出来なくなります。

 

3.追体験（フラッシュバック）がおこる。トラウマの記憶が繰り返し思い起こされます。突然の悪夢に襲われたり、身体が反応して動悸がしたり、呼吸が苦しくなったり、吐き気がしたり、筋肉の硬直が生じたり、冷や汗をかいたりします。

NPO標準医療情報センターhttp://www.ebm.jp/より転載

 

〇福島の事故の後人々が苦しんでいる問題

 

　　しかし、福島第一原発事故の後、人々は、単に上記のような精神的な問題を抱えているだけではありません。うつ病になったり、寝たきりになったり、癌になったり、中には、仮設住宅、避難場所に移動して後、亡くなる方も多くいます。ですから、状況は単なる精神的問題より、深刻になっています。

 

　　　　　　　　　　　(fukushimanuclearpowerplant1)

福島第一原発事故のため大量の放射能が放出され人々の精神と身体に大きな問題をもたらしたことは否定できません

   

東北でぶらぶら病出現か。

 

チェルノブイリも福島も、事故の翌年から甲状腺ガンが増加

 

震災関連死２９００人超＝福島突出、「直接死」上回る〔東日本大震災３年〕

 

 　　　　　　　　　　　　　　　(fukushimashelter2)　　　　　　放射能汚染のために避難所で亡くなった方も多くいます　　人々は苦しみをもたらす記憶と放射能の両方で苦しめられています 

〇PTSDとされる症状の原因がストレスだけではない理由

 

　東日本大震災以降のメンタルの問題も放射能の影響ではないかと考える人もいます。私の意見としては、放射能の影響は否定できないと思います。

 

　なぜなら、1986年のチェルノブイリの原発事故の後にも、被災者の間で、精神的問題や身体的問題が生じたからです。チェルノブイリでは、日本のように地震や津波が発生したわけではなく、人々はトラウマになるような経験をしたわけではありません。

 

　それなのに、人々は、うつ病、記憶障害などのメンタルの問題を抱えました。現地では、それはチェルノブイリ認知症として知られています。また、原発事故の収拾に当たった事故処理員などに神経細胞が死んだために脳が委縮するという状況が見られました。そして多くの事故作業員が死亡しました。

  

終わりなき人体汚染～チェルノブイリから10年　原発関連ドキュメンタリ

 

　　　　　　　　　　　　　　　　　(chelnobyl4)

チェルノブイリ原発事故のため大量の放射能がまき散らされ多くの人々が身体的精神的な問題を抱えました －ストレスだけでなく放射能が人々の健康を損なうことは否定できません

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(chelnobyl5)

チェルノブイリ事故の犠牲者に花をたむける人々

チェルノブイリの事故処理員の多くが放射能のため命を失いました

 

　また、原子炉の爆発を目撃しなかった多くの人が事故の後、身体的問題を抱えています。チェルノブイリの事故の後、ウクライナにおけるLugyny地区の平均寿命は75歳から65歳にまで減少しました。

　また、ウクライナでは、1991年に独立した当時約5200万人だった人口は、2011年には約4560万人となり、事故後約２０年の間に640万人あまり１割以上の人口が減少しました。これは、明らかに原発事故による放射能汚染の結果です。

  

　チェルノブイリ原発事故の影響wiki

  

　チェルノブイリの事故の時と同じように、福島の事故の大規模な放射能汚染のために、脳の機能に悪影響を受けた人が、大勢いると考えられます。

  

〇副腎皮質ホルモン・コルチゾール

 

　コルチゾールは、副腎皮質ホルモンのひとつであり、過度なストレスを受けると分泌量が増加するということです。また、大量のコルチゾールは脳の海馬を委縮される可能性が臨床試験により、確認されているということです。

 

　私は、このストレスホルモンの影響も放射能汚染があると増悪すると思います。

〇ストレスも感情と身体に大きな影響を与える

 

　しかしながら、PTSDの原因は、放射能だけが原因でもないでしょう。なぜなら、PTSDは、戦争や地震、個人的なレイプや虐待の経験など、放射能の関係しない原因によっても引き起こされることが知られているからです。

 

　アメリカでは、第一次世界大戦や第二次世界大戦、またベトナム戦争やその他の戦争や911テロによって引き起こされたPTSDが知られています。精神科を受診する患者の50%がPTSDであるという報告もあります。

 

　ですから、確かに放射能が精神的身体的問題を引き起こすことは事実であるとはいえ、心理的なストレスだけでも人々は、精神的な問題を抱えるでしょう。そして、放射能汚染があれば、問題は、大きくなるでしょう。

   

 

(yoshidamasao1)

吉田昌郎前福島第一原発所長は放射能のため58歳の若さで食道がんで亡くなりました－放射能の悪影響を誰も否定できません

  

　人は身体的に悪影響を受けると、それは、精神的、感情的な面にまで悪影響が及ぶでしょう。人間の体と心は密接に結びついているからです。(箴言14:30)結局、脳も身体のひとつの器官です。それで、ストレスが原因とされるPTSDですが、放射能の汚染も複合的に影響しているでしょう。

 

私はこのPTSDの症状の原因を考えると原発は全廃すべきだと考えます。

 

　　　　　　　　　　　　　　　(fukushimaaccident1)

放射能汚染の精神的身体的悪影響を考えると原発は全廃すべきです

 

次回、ストレスが原因のPTSDにどのように対処することができるかについて考えてみたいと思います。