ルカ23章・裁きを曲げたピラトはどうなったのか

「ピラトは祭司長と支配者たち，そして民を呼び集めて，こう言った。『あなた方は，民を駆り立てて反乱を起こさせる者としてこの男をわたしのところに連れて来た。それで，見よ，わたしはあなた方の前で取り調べたが，あなた方の挙げる罪状の根拠となるようなものを何らこの男に見いだせなかった。・・・見よ，彼は死に価するようなことを何も犯していない。』」（ルカ23：13～15）

イエスは民を駆り立てて反乱を起こさせる者として訴えられました。政治上の権威の一部であったピラトはイエスを取り調べました。ピラトは罪状の根拠となるようなものを何ら見いだしませんでした。ピラトはイエスが死に値するようなことを何もしていないことが分かりました。ピラトは、とにかく事実を客観的に調べて判断する事ができました。

　それなのになぜピラトはイエスを死刑にしたのでしょうか。

　ピラトはイエスを釈放する方法をいろいろと求めました。しかしユダヤ人たちはイエスを釈放するなら，ピラトは「カエサルの友ではありません」と言いました。そしてイエスは自分を王としているので、「カエサルに反対を唱えている」と言いました。（ヨハネ19：12）それで、ピラトはカエサルに対する反逆罪に問われて、自分の立場を失ったり、立場が悪くなることを恐れたかもしれません。さらに、マルコ15章15節には、「ピラトは，群衆を満足させることを願って・・・杭につけるために渡した」と述べられています。宗教指導者の影響を受けたその時その場にいた群衆の圧力に負けて、何の罪もないと分かっていたイエスを死刑にするために渡しました。彼は裁きを曲げました。

　聖書は「人に対するおののきは，わなとなる。しかし，エホバに依り頼んでいる者は保護される」と述べています。（箴言29：25）人を恐れて行動するなら、その人は災いに陥る事があり、エホバを恐れて行動するなら、かえって保護されると述べています。それで、ピラトがイエスを擁護する立場を取っていたとしたら、ピラトはかえって保護されて、立場を失うことはなかったかもしれません。

　ピラトはどうなったのでしょうか。彼は、裁きを曲げても、しばらくは、政治的立場を保っていました。しかし、律法に違反したり、原則を曲げる人というのは、確かに他の場合も律法や原則に違反する人になるでしょう。史実によると、ピラトはサマリア人を殺害した件で、上官に訴えられて、ティベリウス帝の時に総督の立場を解任されたとされています。さらに、歴史家エウセビオスによると、ティベリウスの後継者皇帝カリグラの治世中，ピラトは自殺に追い込まれたとされています。エホバ神はピラトが自らの罪のうちに悲惨な最期を遂げるにまかされました。

　ピラトは神の警告を妻を通して受けていたので、イエスの殺害にかかわらないということもできました。（マタイ27：19）けれども、彼はそうしませんでした。ピラトが神の警告を受け入れていたら、彼の生涯はもっとより良いものとなっていたでしょう。ピラトはその場は罰を免れましたが、自らの罪のうちに滅びてしまったことを史実は教えています。

　世俗の権威のある人が、クリスチャンを裁く立場になることもあるかもしれません。ピラトは自分の立場を守り、人間を喜ばせるために罪のないイエスを有罪とし、裁きを曲げました。

　同じようなことが、現代でも起きるかもしれません。世俗の権威のある人は、罪を犯してないクリスチャンを、クリスチャンの反対者を喜ばせるために有罪にするようにという圧力がかけられるかもしれません。

　しかし、人を恐れたり喜ばせたりするのではなく、神を恐れて公正を守った方が、後の人生に神の保護を得られるということを覚えておくことができるのではないでしょうか。