「狼が小羊と共に宿り」

99・11・28

「狼が小羊と共に宿り」

村上 伸
イザヤ書　11,6-10 ；ローマの信徒への手紙　13,8-12

今日から｢アドヴェント｣に入ります。「待降節」と言い、クリスマスを待つ心の準備をしながら過ごす四週間のことです。この季節には、ことに歴史の長いヨーロッパの国々には、美しい習慣がいろいろあります。その一つが、皆さんの前にある｢アドヴェント・クランツ｣です。もともとドイツの風習です。最初の一週間は四本のローソクの内、一本だけに火を点すのです。次の週は二本。そうやって増やして行って、クリスマスの日には四本全部に火がともる。このようにして、心をこめてクリスマスを待つのですね。

そのアドヴェントの最初の日曜日に、ソプラノの竹内智子さんやリュートの桜田亨さんをお迎えして、美しい音楽で神様をたたえることができるのは、私たちにとって本当に喜ばしいことです。

特に嬉しいのは、この礼拝に、教会学校で毎週聖書のことを学んでいる皆さんも参加してくれたことです。そして、待降節に相応しいイザヤ書十一章の言葉を、しかも手話付きで暗誦してくれました。

あなたがたがせっかく一生懸命に覚えて、天使のような声で（少しほめ過ぎかな？）暗誦してくれたのですから、その言葉について少しお話しましょう。

　

二十世紀は｢戦争の世紀｣といわれていることは、皆さんも知っているでしょう。本当に沢山の戦争があり、世界中で多くの人が死にました。日本は今から六十年ぐらい前に中国との戦争を起こし、それはやがてアメリカやイギリスなどとの戦争に広がって、そして、最後には広島と長崎に原子爆弾が落とされて、とうとう負けました。私ぐらいの年齢の人は、その頃のことを良く覚えています。

東京も焼け野原になり、国中がぼろぼろになって負けた時、すべての人は｢戦争とは何と無意味なことだろう、もう二度とこんな事はしてはいけない｣と、心の底から思った筈です。

でも、戦争はその後もなくなりません。日本は負けた後で｢もう決して戦争はしない｣ということを憲法で決めましたから、今までは平和でした。しかし、すぐ近くでは何度も戦争が起こりましたし、その度に沢山の人々が、ことにお年寄りや子供たちが死んだり、傷ついたりしました。地雷を踏んだために足を失った子供たちの写真を見たこともあるでしょう。

ある人々は、「人間は戦って相手を殺して生きていくようにできている」と言います。「人間には闘争本能があるのだから、戦争はいつまでもなくならない」と。

　でも、聖書は、「神様がお造りになった世界には、初めは、お互いに憎み合ったり殺し合ったりするようなことは全くなかった」と言います。本当に平和だったのです。

　けれども、人間の心の中に、先ず自分のことだけを考えるという「わがまま」が生まれてから、争いが始まりました。そしてそれは、国と国の間の戦争に発展しました。

　戦争をすれば、お父さんやお兄さん、大切な人がどんどん死んでいきます。私のお兄さんも機関銃で撃たれて死にました。家が焼かれ、学校や病院も爆撃されます。良いことは何一つありません。それなのに、どうして戦争はなくならないのか？

　戦争は絶対になくならないものでしょうか？

　いいえ、憎み合い・傷つけ合い・殺し合いは、必ず止む時が来る、と聖書は言います。やがてその時が来る。神様がその時を来たらせて下さる。

　さっき皆さんが朗読してくれたイザヤ書の言葉は、そのことを約束しているのです。

　「狼は小羊と共に宿り」！普通、狼は小羊を食べるものでしょう？でも、その約束の日が来れば、そんなことはなくなる、というのです。動物の世界でも「弱肉強食」がなくなるが、人間の間でもそういうことは止み、戦争は二度と起こらなくなる。

　「獅子も牛もひとしく干し草を食らう」。干し草というのは、植物が実を結んだ後で枯れたものでしょう？それを食べたからといって誰も傷つきません。そういう時が必ず来る。「私の聖なる山においては、何ものも害を加えず、滅ぼすこともない。水が海を覆っているように、大地は主を知る知識で満たされる」。

　つまり、この世界に、神様の御心を知る人が増えれば、必ず憎み合いや殺し合い、戦争はなくなる、というのです。これが神様の約束です。そして、この約束は、必ず実現する。「ドリームズ・カム・トウルー」！

　そのことの証拠が一つあります。

　この世界に、イエス様のように、決して人を憎まず、決して人を殺さない人が生まれた。そして、そのイエス様に従って生きようという人々が、少しずつだけれども増えている、という事実です。ですから、この神様の約束を信じましょう。