CD Review ◆ CD評 これは魂の奥底からの祈りの調べ

大嶋博道
日本フリーメソジスト 神戸ひよどり台教会 牧師

静かな夜、何度も彼女のピアノ演奏を聴いた。曲に忠実に、丁寧に音を重ね紡いでいく彼女の美しいピアノの魅力に感嘆！　研ぎ澄まされた音楽への感性が、溢れる神の恵み、心に広がる平安、愛されている、生かされている喜びを表現していく。
ドイツを拠点に活躍していた彼女に三年前、病魔が襲う。今も治療が続く中でこのＣＤをリリース。彼女は、一曲目にドビュッシーの「月の光」、最後の曲に「月光ソナタ」を選んでいる。幼少の頃から太陽の光よりも月の光の方が神様を近くに感じ、静まりのときが与えられているからと言う。また、月光ソナタを作曲したときのベートーヴェンの状況と、思いがけない大病との壮絶な闘いの真っ只中にある彼女の現実とが重なり合っているからと語る。
「一羽のすずめ」や「アメイジング・グレイス」は最もよく知られ、多くの方々に歌われ、演奏される曲、「ノクターン」は夜を想う曲、「アラベスク」はドイツ留学時代、森を散歩中に頭の中を常に流れていた曲、また、｢主よ、人の望みの喜びよ」や「ラルゴ」は、祈りの中に主への望みを抱き、委ねる信仰をかき立ててくれる曲、さらに、牧童の笛とも称される「エオリアン・ハープ」や映画音楽の「ニュー・シネマ・パラダイス」などは、彼女の演奏のジャンルの広さを感じさせてくれる曲である。
彼女は「大病で失ったものがある一方で、与えられた恵みの方が勝る」との信仰に堅く立ち、「今の自分だからできる演奏をとおして多くの人々に寄り添い、希望の光なるお方へと導きたい」と、熱く語る。
このＣＤは憐れみの神様との、家族をはじめ、祈り支えてくださった愛する周りの方々との、生かされている、愛されている感謝の気持ちとの「シンフォニア（共饗）」でもある。聴き終えた瞬間、静かな感動に満たされた。あなたにも心からこのＣＤをお届けしたい。

「ＣＯＭＰＡＳＳＩＯＮ～生かされて～」
工藤真史

＜収録曲＞１．きらめき…曲 月の光 C.ドビュッシー ２．守… 曲 一羽のすずめに 賛美歌 ３．憧れ… 曲 愛を奏でて E.モリコーネ ４．愛情… 曲 ノクターン 第2番 F.ショパン ５．躍動… 曲 アラベクス第1番 C.ドビュッシー ６．希望… 曲 主よ、人の望みの喜びよ J.S.バッハ ７．祈り… 曲 ラルゴ J.S.バッハ ８．風… 曲 エチュード第13番「エオリアン・ハープ」F.ショパン ９．郷愁… 曲 ニュー・シネマ・パラダイス E.モリコーネ 10. 神の愛… 曲 アメイジング・グレイス 賛美歌 11. 幻… 曲 ピアノソナタ第14番「月光」第1楽章 L.v ベートーベン 12. 恋… 曲 ピアノソナタ第14番「月光」第2楽章 L.vベートーベン 13. 感傷… 曲 ピアノソナタ第14番「月光」第3楽章 L.v.ベートーベン