日本人は反ユダヤ主義ですか。

Q.質問

Q：ユダヤ人とさほど接触のない日本人の中にも、反ユダヤ的な人が見かけられます。その理由は、なんですか。

A.回答

大変重要な問いかけだと思います。日本では、欧米諸国ほど反ユダヤ主義が蔓延しているわけではありませんが、それでも、ご指摘のように反ユダヤ主義が存在することは確かです。このテーマについて、いつものように3つ申し上げます。

1番目に、陰謀論の影響があります。

（1）『シオン賢者の議定書』（The Protocols of the Elders of Zion）（プロトコール）」

　　①20世紀初頭にロシア帝国で作成された偽書（偽製文書）

　　②ユダヤ人が世界征服を計画しているという内容を含んだ文書

　　③歴史上、多くの反ユダヤ主義と陰謀論の根拠となりました。

　　④学界からは激しく非難されていますが、その悪影響は今も続いています。

（2）ユダヤ陰謀論の内容

　　①ユダヤ人は「世界を陰で操るエリート」「金融を支配する者たち」である。

　　②欧米の反ユダヤ的著書が日本語に翻訳され、反ユダヤ主義を助長しました。

2番目に、歴史的・政治的誤解があります。

（1）第二次世界大戦中、日本はナチス・ドイツと同盟関係にありました。

　　①ナチスのプロパガンダが伝わり、反ユダヤ的な考え方が広がった可能性があります。

　　②戦後もこれが払拭されることなく、その悪影響が続いている可能性があります。

（2）最近の反ユダヤ主義は、政治的なものに変質しています。

　　①ユダヤ人に対する人種差別は、非近代的な思想として排除される傾向にあります。

　　②それに代わって、反イスラエル主義が台頭しています。

　　③その根拠となるのが、いわゆる「パレスチナ神話」です。

＊「ユダヤ人はパレスチナ人から土地を奪った」

3番目に、インターネットの普及があります。

（1）オンライン上での「グローバリズム批判」は、反ユダヤ主義を助長します。

　　①特定の国際的なリーダーや企業がユダヤ人であることが強調されます。

　　②それを基に、ユダヤ陰謀論が広がります。

（2）ユダヤ人に対するネットリンチが拡散する土壌となるテクノロジーが存在します。

　　①SNSや匿名掲示板などでは、言いたい放題の暴言が流布します。

　　②その結果、反ユダヤ主義のエコーチェンバーができあがることになります。

今回はここまでです。次回は、「ユダヤ人を助けた日本人」というテーマを取り上げます。