朴栄子 著
「すると、妻が彼に言った。『あなたは、これでもなお、自分の誠実さを堅く保とうとしているのですか。神を呪って死になさい。』」(ヨブ2・9)
聖書には多くの人物が登場しますが、主役級の有名どころのほかに、脇役やエキストラもあふれています。特に女性には名前がないことが多く、時代背景を感じさせる役回りが多いです。
なかにはただの一言もことばを発しない人物もいます。それでも登場した以上、何らかの存在意義があるキャスティングなのです。
ヨブの妻は、冒頭の暴言とも思えることばで知られています。彼女はこれしか語っておらず、長い物語のなかでこの節以降はまったく姿を現さないことも、強烈な印象を残すのに一役買っています。
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ウツの地で族長として、何不自由なく暮らしていたヨブ。神さまにもその正しさを認められ、家族仲もよく、年長者から子ども、高貴な人も貧しい人もみんなが敬意を払うような立派な人物。その彼に突然、災難が襲いかかります。
人が誰しも一度は経験する苦難。その意味を問うヨブ記は、多くの人に愛される書物です。特に苦難のなかにある人は、自分が経験していることとヨブの状況を重ね合わせて、なぐさめを得ることでしょう。
ところが、その傷口に塩をすりこむようなとんでもない人物がこの妻。
何この人? 信じられん。ヨブみたいなええ人に、こんな悪妻ってありえへんわ!
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ところで近年は「〇〇カフェ」なるものが、目につきます。「当事者サロン」という言い方もします。
わたしも教会で友人と一緒に、「カフェ・まうむ」というオレンジカフェ(認知症の方やその家族の集まり)を開いています。介護に行き詰まって、誰か共感してくれる人に話を聞いてもらいたい、と切望していた自分の経験から始めたものです。
「がんカフェ」も全国に無数に広がっています。正式には「がん哲学外来(メディカルカフェ)」と言って、クリスチャンドクターの樋野興夫さんが提唱されたものです。樋野さんの書かれたこんな文章にハッとしました。
「友人ならぜひご家族にも声をかけてあげてください。肉体的にも精神的にもがん患者の家族が受けるストレスは大変なものですが、その割に家族の話を聞いてくれる人は案外少ないのです。」(『聖書とがん』イーグレープ、二〇二〇年)
患者だけでなく、その家族も苦しんでいる。苦難に遭った人の家族もまた、苦しんでいる。そんな当たり前のことを見過ごしてしまって、わたしは表層的な理解でバッサリとヨブの妻を断罪していたのでした。
ヨブは葛藤します。正しく生き、信仰を貫いてきたはずなのになぜ、という苦悶です。頭のてっぺんから足の先まで、全身が腫れ物に冒され、見る影もありません。
そのような夫を見る妻はどれほど辛かったのか。そして愛する子どもたち、全財産と使用人たちを喪ったのは、妻も同じ。彼女もまた苦難の当事者でした。
神さま、ひどいじゃありませんか。いままで敬虔に生きてきた夫が、どうしてこんな目に遭うのでしょうか。本当にあなたは公平な方なのでしょうか。
こう叫びたかったのは、彼女のほう。
散々な目に遭わされても、いい子ちゃんでいる夫にイライラして当たってしまったけれど、怒りの矛先は、全能者に向けられたものではないでしょうか。
妻の怒りに触発されたのか、その後、「主は与え主は奪う」という百点満点のことばを述べたヨブ自身が、生まれた日を呪い、長い長い葛藤のトンネルに入っていきます。
人は似たものに対して反応してしまいます。自分のなかにもある嫌な点を相手に見出すと、怒りを覚えてしまうものです。あのことばは夫をさげすむものではなく、その胸裏にあった思いの代弁ではないでしょうか。
わたしをはじめほとんどの人は、ヨブの痛みには注目しますが、影に隠れている妻の痛みは忘れています。
他者の痛みを理解するのは難しい。その当事者と同じ立場に立つことは、もっと難しい。けれどもできるだけ、目立たない存在にも寄り添いたい。かき消されてしまいそうな小さな声、ことばの裏にある思いを聞き取ろうとする姿勢を持ちたい。そう願います。
在日大韓基督教会・豊中第一復興教会担任牧師。1964年長崎市生まれの在日コリアン3世。
大学卒業後、キリスト教雑誌の編集に携わる。神学修士課程を修了後、2006年より現職。
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*「コッチュ」は韓国語の「唐辛子」のこと。小さくてもピリリとしたいとの願いを込めて、「からし種」とかけています。
He is a cross pendant.
He is engraved with a unique Number.
He will mail it out from Jerusalem.
He will be sent to your Side.
Emmanuel
Bible Verses About Welcoming ImmigrantsEmbracing the StrangerAs we journey through life, we often encounter individuals who are not of our nationality......
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