エペソ書とキリストの戦い(1)

聖書に出てくる用語、クリスチャンが使う用語を説明しています。 ヘブル的視点で解説されていますので、すでにクリスチャン歴が長い方にも新しい発見があるかもしれません。

所属教会のサンデースクールで何回かに分けてエペソ書の学びをしてきましたが、今日は最終回で6章を取り上げました。この章は「神の武具」「霊的戦い」で有名な箇所ですが、エペソ書で霊的戦いについて述べられているのはここだけではありません。この機会に、エペソ書における霊的戦いについてまとめてみました。

エペソ書6章のいわゆる「神の武具」の箇所(10-18節)は霊的戦いを教えている箇所として有名です。エペソ書で霊的戦いというとこの部分だけが突出して有名ですが、実は1章20-21節、2章2節、3章10節、4章27節などを見れば分かるように、霊的戦いはエペソ書全体を貫く大きなテーマであると言って良いと思います。

本書の全体をまとめるキーワードは「神の奥義」です。

8  神はその恵みをさらに増し加えて、あらゆる知恵と悟りとをわたしたちに賜わり、  9  御旨の奥義を、自らあらかじめ定められた計画に従って、わたしたちに示して下さったのである。  10  それは、時の満ちるに及んで実現されるご計画にほかならない。それによって、神は天にあるもの地にあるものを、ことごとく、キリストにあって一つに帰せしめようとされたのである。(エペソ1章8-10節)

奥義」と訳されているギリシア語ムステーリオンは英語のmysteryの語源にもなったことばで、「それ以前には知られていなかったが、時が来てある特定の人々に示される内容」のことです。ここでは神の「御旨の奥義」と書かれていますが、パウロが語っているのは、天地創造以来神が歴史を動かしてこられたその目的は何処にあるのか、と言う点について、終わりの時代に明らかにされた啓示の内容です。本書の全体はこの「奥義」の説明と適用であると言っても良いでしょう。

そして、その「奥義」の内容が10節に書かれています:「神は天にあるもの地にあるものを、ことごとく、キリストにあって一つに帰せしめようとされた」。エペソ書では「天」と「地」という領域が大きな役割を果たしていますが、この二つの領域においてキリストのもとにすべてを一つにされることが、歴史に対する神の目的だということです。本書の内容にしたがってこのことを図示すると次のようになります:

1章でパウロは、神がキリストにおいてなされた救いの御業をこう表現します:

20  神はその力をキリストのうちに働かせて、彼を死人の中からよみがえらせ、天上においてご自分の右に座せしめ、  21  彼を、すべての支配、権威、権力、権勢の上におき、また、この世ばかりでなくきたるべき世においても唱えられる、あらゆる名の上におかれたのである。(1章20-21節)

ここに出てくる「支配」「権威」等は単なる抽象的な概念ではなく、パウロにおいては人格を持った霊的存在を表しています。これらは天において神に敵対する霊的勢力なのです。復活し、神の右に挙げられたキリストは、これらすべての敵対勢力に対して優位に立たれたのです。神がキリストにおいて「天にあるもの」を一つに帰されるとは、このことを指しています。

それでは「地にあるもの」についてはどうでしょうか?2章では、神はキリストの十字架を通してユダヤ人と異邦人の間の隔ての壁を打ち壊し、キリストにあってすべての人を一つにする道を開かれた(15節「ひとりの新しい人」)ということが語られます。そして2章の後半ではパウロは教会を神殿にたとえています

20  またあなたがたは、使徒たちや預言者たちという土台の上に建てられたものであって、キリスト・イエスご自身が隅のかしら石である。  21  このキリストにあって、建物全体が組み合わされ、主にある聖なる宮に成長し、  22  そしてあなたがたも、主にあって共に建てられて、霊なる神のすまいとなるのである。 (エペソ2章20-22節)

実はこの箇所は、上で見た、天における敵対勢力への勝利というテーマと結びついています。最近出たエペソ書の研究書によると、1:20-2:22までの内容は、古代世界における「神の戦いdivine warfare」のパターンに従っているといいます(Timothy Gombis, The Drama of Ephesians)。それによると、全地の王である神はまず出かけていって敵対する勢力を征服します。凱旋してきた神は勝利のしるしとして神殿を建設し、そこに住みます。そして神の民はその宮に集まって神を礼拝し、その支配を祝うというのです。このパターンは出エジプト記15章や黙示録19-20章にも見ることができます。また、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスがヒスパニアとガリアで大勝利を収めて凱旋する際、元老院はその勝利を記念して「平和の祭壇Ara Pacis Augustae」を築きました。

アウグストゥスの勝利を称える「平和の祭壇」

エペソ書においても、同様のパターンが見られます。パウロによると神は世界を創造された全能の神です。そしてこの神がすべての支配と権威の上に御子キリストを挙げられました。キリストの宇宙的主権は同時に神の王権の表現でもあります。神が実際にそのような世界の王であることはどうやって証明されるのでしょうか?それは支配や権威と言った敵対勢力に対して勝利を収められたことによります。それはキリストの十字架によってなされたのです。エペソ2章ではキリストの十字架はユダヤ人と異邦人の和解ということに焦点が当てられていますが、それが同時に霊的な敵対勢力に対する勝利でもあったことは、彼らがキリストによって救われてきたのは「空中の権をもつ君、すなわち、不従順の子らの中に今も働いている霊に従って、歩いていた」状態からであったことからも分かります(2章2節)。十字架が敵に対する勝利であったことは、コロサイ書でさらに明確に書かれています:

13あなたがたは罪によって、また肉の割礼がなくて死んだ者であったのに、神は、そのようなあなたがたを、キリストとともに生かしてくださいました。それは、私たちのすべての罪を赦し、 14 いろいろな定めのために私たちに不利な、いや、私たちを責め立てている債務証書を無効にされたからです。神はこの証書を取りのけ、十字架に釘づけにされました。 15 神は、キリストにおいて、すべての支配と権威の武装を解除してさらしものとし、彼らを捕虜として凱旋の行列に加えられました。(コロサイ2章13-15節)

そして、この勝利の後、神は教会というご自分の神殿を建てられました。だから教会はいわば地上における神の勝利の祈念碑だと言えます。ただし、ここでは神殿が神の民の集う場所としてではなく、神の民そのものとして表され、そこに神が住まうとされます。このように神殿として集められた神の民は神を礼拝します。それはある意味で、神がキリストによって主権や力に勝利されたことを祝う祝祭です。神が神殿を造られるのは、敵に勝利するという仕事を終えて休むためではなく、ここから万物を統治するという本当の仕事が始まるのです。そしてクリスチャンが御国を受け継ぐということは、そのような神のご支配に参加させていただくということです。ですから黙示録には新しいエルサレムに住む聖徒たちについて、「彼らは世々限りなく支配する。」(22章5節)と書かれています。

このように、キリストの十字架と復活、そして教会の誕生という救済史における一連の流れは、敵対勢力に対する神の勝利という霊的戦いの背景を考える時に初めて良く理解することができます。それと同時に忘れてはならないのは、神がどのようにしてこれらの敵に勝利されたか、ということです。先ほどのゴンビスは、それはイエス・キリストの十字架の死という、最も勝利とは遠いと思われるような出来事を通してであったと言います。つまり、神の勝利は弱さと自己犠牲的な愛と死という、この世が考える軍事的勝利とは正反対のできごとを通して表されるのです。このことは聖書が教える霊的戦いを考える上で大変重要だと思われます。クリスチャンが霊的戦いを考える時、この世的な「戦い」「戦争」のイメージや価値観で戦うことがないように充分に注意しなければなりません。拙著『平和の神の勝利』の中に「愛による戦い」という短い章がありますが、そこではクリスチャンが愛し合って一致していくことが最大の霊的戦いであると書きました。私たちは十字架を魔除けのように使うのではなくて、十字架を背負い、イエスに倣ってその後についていく時、初めて本当の意味で敵に勝利することができるのです。

(続く)

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