幼子のキリスト

ここで引用される聖書の著作権は日本聖書協会に属します

「幼子のキリスト」

廣石 望
(新共同訳);(試訳)

I

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、現在世界には1,994万人の難民がいます。「難民」とは「紛争に巻き込まれたり、宗教や人種、政治的意見といった様々な理由で迫害を受けるなど、生命の安全を脅かされ、他国に逃れなければならなかった人々」であり、その52%が18歳未満の子どもだそうです。
(⇒ https://www.japanforunhcr.org/lp/refugees?utm_source=yahoo&utm_medium=cpc&utm_campaign=JA_JA_UNHCR_Generic_refugees )
さらに、国境を超えていないけれども難民と同様の状況にある人々、つまり「国内避難民」は世界で約3,912万人。さらに、どの国によっても国民と認められていない「無国籍者」である人々は約385万人。加えて自分の国を逃れ、よその国の避難所にたどり着き、その国で庇護申請を行っている人々が約310万人。
単純にすべてを合計すると約6,600万人が、紛争や宗教、人種、政治的立場などが理由で、故郷を追われているか、自分の生まれた国の保護を受けられません。とりわけ難民のうち52%、つまり1,036万人が18歳以下です。東京都の計23区の人口が約948万人ですので、それより約90万人近い子どもたちが他国に逃れています。「国内避難者」を加えると、はるかに多くの子どもたちがそこに含まれるでしょう。


 

II

 この聖夜のために選ばれた聖書箇所に続く部分からは、イエスもまた難民の子どもであったことが知られます。占星術師たちと同じように夢でお告げを受けた父ヨセフが、王ヘロデによるベツレヘム一帯の2歳以下の男児虐殺に直面して、妻マリアと息子イエスを連れてエジプトに逃亡し、王の死後に初めてイスラエルに帰国するからです(2,13以下)。

 クリスマスは、子どもたちのためのお祭りです。それは子どもがかわいいからというより、自分の力で自分を守ることができない存在の代表だからです。私たちのテクストは、それに先立つイエス誕生のときのエピソードを物語ります。幼子のキリストを描く聖書の言葉に、ごいっしょに耳を傾けましょう。


 

III

 「ユダヤ人たちの王に生まれた者」(2節)とは「キリスト」(4節)つまりメシアであり、メシアはベツレヘム出身の「支配者」として神の「民イスラエルを牧するであろう」と言われます(6節)。少し先では「神の息子」(15節)とも呼ばれます。これは、ユダヤ教に伝統的であった、力に溢れる政治的解放者としてのメシア像に合致します。

 私たちの聖書箇所は、イエスこそがそのキリストであると告げます。しかし、じっさいのイエスは母マリアから「生まれ」、星によって「告知」され、占星術師たちから「跪拝」されて贈り物を献じられ、後にはヘロデによって「探され」、父ヨセフによってエジプトに「連れて」行かれる存在、要するに自分からは何もせず――いいえ何もできず――むしろ大人たちその他の行為の対象として動詞の受身形で言及される「幼子」です。幼子キリストは、難民の子どもたちと同様、社会的な発言力も物理的な強制力ももっていません。

 これとは対照的に、ヘロデは「王」という肩書をもち、人々を呼びつけて調査させ、敵を殺すために軍隊を派遣する権限をもっています。しかし絶対権力をもつ王も、その力は無限でありません。キリスト誕生の知らせを受けたとき、聖なる平和の都ヒエロソリュマの全住民と共に、彼は「狼狽」したからです(2節)。ならば真のキリスト、メシアは、王ヘロデと同じような意味で力を揮う存在とは異なる者でありましょう。


 

IV

 エルサレム在住の「祭司長たちと民の律法学者たち」は、キリストがベツレヘムで生まれることを知っていました(3節)。彼らが民族の特権的な知識を独占するインサイダーです。この知識の正しさ、またキリストがイスラエルに救いをもたらす存在であることを、マタイ福音書は共有しています。

 しかし知識人たちや王でなく、むしろ外国人である占星術師たちが「ユダヤ人たちの王」の誕生を正しく見抜いた、と私たちのストーリーは語ります。彼らから指摘されるまで、ヘロデも祭司長たちもキリストの誕生に気づきません。しかも占星術は古代ユダヤ教の伝統では、使ってはいけない禁じられた技術でした。

 そのアウトサイダーである占星術師たちが「星」に導かれ、幼子のキリストに「跪拝」と贈り物を捧げます。その一方で、ユダヤの現在の王が「もし見出したら、言え。私もまた、行って彼を跪拝しよう」と言うのは(8節)、キリストを殺害するための嘘です。イエスは、神の民イスラエルに救いをもたらす支配者ですが、その民は彼を受け入れません。他方で東方から来た異教徒たち、アウトサイダーである占星術師たちが、幼子のイエスを正しく礼拝します。真のキリストは、イスラエルの民だけの救済者ではありません。異邦人たちにも救いをもたらす存在です。


 

V

 イエスの誕生は、イスラエル民族の伝統的なメシア期待を書き改めました。

 幼子のキリストは暴力によらず、神の御使いたちによって、また父や母、外国の善意ある人々から守られることで、神の「民イスラエルを牧し」、彼らを「その罪から数う」という任めを果たします。成人したイエスは「剣をとる者は、みな剣で滅びる」(26,52)と言って、受難と死の中へと歩み入りました。キリストは、死者たちに新しい命を与える神の力と、その力への人々の信頼を通して支配します。またイエスの誕生は、異民族支配からイスラエル民族を解放し、諸民族に対するイスラエルによる世界支配の栄光をもたらす、というメシア期待を書き換えました。復活したキリストは弟子たちに、「君たちはすべての民族を私の弟子にしなさい」と命じます(28,18)。ユダヤ人だけでなく、異邦人にも天の王国の扉を開くことがその役割です。

 古のユダヤから見て、私たちもはるか東方出身の異邦人です。そして今晩、幼子のキリストの誕生を共に讃えるために、この星の下に集いました。幼子イエスは、私たちも属する「我が民イスラエル」の牧者として、自国の国益を第一に据えるのとは異なる視点を私たちに示唆します。福音書記者マタイがメシアの台本を書き改めたように、私たちも聖書の促しに従って、私たち自身の暮らし方の台本を新しくイメージしたいと願います。


 
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