現代科学と開かれた未来(ジョン・ポーキングホーン)

聖書に出てくる用語、クリスチャンが使う用語を説明しています。 ヘブル的視点で解説されていますので、すでにクリスチャン歴が長い方にも新しい発見があるかもしれません。

今年になって名古屋の大学の非常勤講師としてキリスト教について教え始めました。その中で「キリスト教と科学」という主題について話をする機会があり、準備のために読んでいた本の中で、イギリスの物理学者・神学者ジョン・ポーキングホーンが神と未来について興味深いことを言っている箇所に出逢いました。

ポーキングホーンはノーベル物理学賞受賞者ポール・ディラックの元で学び、1979年までケンブリッジ大学の数理物理学教授をつとめた後、1982年に英国国教会の司祭になった人物で、ケンブリッジ大学クイーンズ・カレッジの総長をつとめたこともあります。

ポーキングホーンには科学と宗教の対話についての多数の著作がありますが、『科学者は神を信じられるか――クォーク、カオスとキリスト教のはざまで』(講談社ブルーバックス)の中で、量子力学やカオス理論といった現代物理学が明らかにしてきた世界像は、「真の意味で生成する世界である」と述べています。ニュートン力学的な機械論的世界観では、現在の世界の状態についての情報をすべて正確に知ることができれば、未来に世界がどうなるかを完全に予測することができることになりますが、現代物理学が示唆する世界観では、事象が生起する過程で本当の意味での新しさが生まれる、というのです。

このことは神学にとって何を意味しているのでしょうか?ポーキングホーンは言います:

神はすべてを知っている。しかし、真に生成する世界では、神はすべてを知ることはできないのではなかろうか? 生成されるであろう世界については、神は無知なのだろうか? このことは神が不完全であるのではなく、未来は知られるべきものとして存在していないことを意味する。もしこのことが正しいとすれば、神は永遠であるとともに、神も時間を経験しているにちがいない。このような結論については議論も多くあり、必ずしも皆が同意してくれるとは思わない。私はそう信じるのである。

古典神学では、神と時間との関係は、神は世界を一瞬のうちにみることができるというものである、と解釈した。いわば、神は世界の歴史を上の方から眺めているのである。そのとき神は未来を予知するのではなく、知っていたのである。なぜなら、過去、現在、未来は神にとっては同時に存在していたのだから。私はそのように信じるのは困難である。生成する世界は、私がすでに述べたように、時間という概念とは別に存在しているからである。

歴史は存在するというより、展開しているのである。我々は未来をつくり出すのであって、未来は我々の到達点ではない。もちろん、私は神が未来について万全の用意をしていることを信じるが、しかし、神が前もって、自由な選択の結果、何が起こるかを知り、このような自由な過程の末、どんな世界が現れるかを知っているとは信じられない。(112-113ページ)

神と時間、開かれた未来について、ポーキングホーンは他の著作でも語っていますが、『科学者は神を信じられるか』は日本語で一般の読者向けに分かりやすく書かれたもので、おすすめです。講談社ブルーバックスはよく知られた一般向け科学啓蒙書のシリーズですが、本書がキリスト教系のシリーズから出されたのでないのも、興味深いところです。

このような(部分的に)開かれた未来に関する考え方は、まさにオープン神論の考え方と一致するものと言えます(こちらの過去記事を参照)。私はポーキングホーン自身がオープン神論について直接言及している記述をまだ見つけていませんが、いくつかの二次資料で彼がオープン神論者と呼ばれているのを読んだことがあります。

興味深いのは、ポーキングホーンが開かれた未来に関する見解を彼自身の専門分野である物理学の知見から引き出していることです。つまり、ポーキングホーンの考えは神の全知性についての神学的考察からではなく、神が創造した世界の性質についての科学的考察から導き出されたものなのです。

こちらのサイトでは、ポーキングホーンへのQ&Aを掲載していますが、その中で彼は同じテーマについてこう述べています:

私の議論は、神が未来を知ることがないということが自由意志を保証するために不可欠だというのではなく、自由に選択を行う存在を含むような世界は未来に対して開かれていなければならず、したがってそれは真に生成する世界でなければならない、ということです。それゆえ、神はその世界を真の意味で、つまりその現実の性質――実際の生成性――にしたがって知る、ということになります。その結果生じることは、神は時間と関わりを持ち、未来の詳細を知らないことを選ばれる、ということです。これはまさに、神が被造物とどう関わることを選ばれたかについて聖書が語っている方法であるように、私には思えます。

ここでは、神が未来についてすべてを知ることができないということは、神の全知性の問題ではなく、神が創造した世界はどういう性質を持っているかという問題だということが分かります。ポーキングホーンがここで言っているのは、神はこの世界を真の意味で生成するものとして創造することを選ばれた、そしてその決定には、神が時間の中で世界と関わり、未来についての詳細を知らないことも織り込まれていると言うことだと思われます。

科学と神学・聖書学との関係は複雑なもので、ある特定の神学や聖書解釈を「現代科学が証明した」という言い方は個人的にはしたくありません。けれども、科学とキリスト教は有意義で建設的な対話を行うことができるということについては、楽観的でありたいと思っています。「生成する世界」というポーキングホーンの概念は、オープン神論に対して科学の分野から貴重なサポートを与えてくれるものであると思います。

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今回の記事が当ブログの通算200回目の投稿になります。2014年の11月に開設した時には、どこまで続けられるのか、皆目見当もつきませんでした。なかなか更新が難しい時もありますが、多くの方々に励まされてここまで来ることができたことを感謝しています。今後ともよろしくお願いいたします。

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