明智光秀の三女として生まれ、後にキリスト教信仰をもった細川玉(洗礼名ガラシャ)。貴重な歴史文書である、イエズス会宣教師宛ての書簡から、信仰者・細川ガラシャの実像を探ります。
殉教の覚悟を記した細川ガラシャの手紙
『聖書を読んだサムライたち』シリーズ 著者 守部喜雅
“たとえ、天が地に落ち、草木が枯れはてても、私の信仰は決して変わることはありません”
二〇二〇年のNHK大河ドラマ「麒麟がくる」の主人公が明智光秀と知ったとき、光秀の三女・玉(玉子)のことがどのように描かれるのかが気になりました。
織田信長に謀反を起こした父・光秀のゆえに、夫・細川忠興は玉を辺境の地に幽閉、その苛酷な二年間の生活の中で玉は魂の飢え渇きに苦しみ、それは、高山右近を通して知らされていたキリシタンの愛の神の教えに対するあこがれとなります。危険を冒して大坂の教会を訪れ、後にキリシタンの侍女・清原いとの手によりキリシタンとなる儀式である洗礼を受けたのです。
この細川玉こと細川ガラシャは、豊臣秀吉による伴天連追放令が出たときには、殉教の覚悟をイエズス会神父に告白しています。以下に紹介するガラシャの書簡は、一五八八年二月にガラシャが有馬から大坂の修道長・セスペデスに宛てた手紙ですが、イエズス会宣教師ルイス・フロイスは、彼の日本における最後の報告書「二十六聖人殉教記」に収録しています。この手紙の冒頭で、ガラシャは自らの信仰について次のように記しています。
「武田が昨日朝、当地に参り、伴天連様、いるまん様方御動静を拝聞いたしました。喜びに堪えないことでございますが、とりわけ、皆様全員が日本を御退却なさるものではないことを承り、私にとっても本当に喜びに堪えません。
これによって私も心に力を得て、いずれは当地方にもお戻りになり、御面接を賜ることもあろうかと希望を新たにしました。私のことについては、伴天連様が御存知のごとく、切支丹となりましたのは人に説得されての事ではなく、ただ全能の天主の恩寵により、私自らがそれを見出してのことであります。
たとえ、天が地に落ち、草木が枯れはてても、私が天主から得た信仰は決して変わることはありません。最も悲しみに堪えないことは、伴天連様への迫害により私達が受けた不幸であります。けれどこれによって、良き切支丹としての信仰が、説明されるものと思われます。
伴天連様方御退去の後、私への苦難は絶えたことがありませんが、何事も天主の御助けにより御加護を受けておる次第でございます。」
ガラシャが洗礼を受けたことは、忠興に大きな衝撃を与えました。ガラシャの手紙には、戦から戻ってきた忠興が以前にも増してガラシャに対しつらく当たってきた状況が克明に記されています。それは、ガラシャ自身に対して厳しいと同時に、洗礼を受けた侍女や子どもの乳母たちに対しても過酷な処分を下したのです。
たとえば、ガラシャの子どもの乳母が洗礼を受けたことが判明するや忠興は、些細な過失を犯したという理由で、その鼻を削ぎ、両耳を切りとって屋敷から追い出しています。また、他の二人の侍女は、洗礼を受けてキリシタンになったがゆえに髪を切り取られ、追放されました。
そのような過酷な状況の中で、ガラシャは、侍女たちに信仰を失わないように励ましています。手紙の中で、ガラシャはキリシタンとして生きることにゆるぎないという覚悟を次のように記しています。
「マリアと私は、いかなる迫害が、越中殿あるいは関白殿のいずれより来たとしても既に覚悟を決め、その機に臨んで天主への愛のために、いくらかの苦難を受けることができることを喜んでいる次第です。」(前掲書)
ここでマリアというのは、ガラシャに洗礼を授けた清原いとの洗礼名です。越中殿とは細川忠興であり、関白殿とは豊臣秀吉を指しています。
この手紙の中で注目されるのは、ガラシャがなぜ、キリシタンになったのかという疑問については、人に勧められたからではなく、あくまでも神の恩寵によるのだと告白していることです。それは、彼女が前に、信奉していた禅宗が、あくまでも人間の側の修行によって悟りを得るという世界であり、それと全く異なり、キリシタンにとって人間の救いは愛なる神が与えてくださる恵みによる、ということを意味します。ですから、“ガラシャ”(神の恩寵)という洗礼名が与えられたのです。
豊臣秀吉の死から二年近く経った一六〇〇(慶長五)年六月、ガラシャの夫・細川忠興は、徳川家康が率いる東軍に合流。七月に入り、西軍の豊臣側の石田三成はガラシャを人質に取ることを決意、兵を細川家の屋敷に向けますが、ガラシャは自害の道を選びます。家老の小笠原少斎の介錯により、地上での三十八年の生涯を終えたのです。
それから三百年後、全焼した大坂玉造の細川家の屋敷跡にガラシャの記念碑が建てられました。その石碑には、ガラシャの辞世の句が力強い筆致で刻まれています。
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