御国を来たらせたまえ(7)

聖書に出てくる用語、クリスチャンが使う用語を説明しています。 ヘブル的視点で解説されていますので、すでにクリスチャン歴が長い方にも新しい発見があるかもしれません。

(本シリーズの過去記事 1 2 3 4 5 6)

このシリーズでは「神の国の到来」というテーマをいろいろな側面から考えてきました。聖書の提示する終末的希望は、神の国すなわち神の王としての主権的な支配が地上に到来することである、とういことを何度も繰り返してきました。

しかし、神の国は何もない空き地に到来するわけではありません。現在の地上は神以外の存在によって支配され、神の意志とは異なる意志によって動かされています。主の祈りの中でイエスが弟子たちに、「御国を来たらせたまえ。みこころの天になるごとく、地にもなさせたまえ。」と祈るように教えられたのは、まさに現時点では神の支配はこの地上を未だ完全におおっておらず、神のみこころが完全になっていないからこそなのです。そのような領域に神の国が「訪れる」というのは表現が少し穏やか過ぎるかもしれません。実際には、神の国は、神に敵対する存在が支配するもう一つの王国に侵攻してくるのです。

この記事では、主にルカ福音書によりながら、このテーマについて見て行きたいと思います。

14  さて、イエスが悪霊を追い出しておられた。それは、物を言えなくする霊であった。悪霊が出て行くと、口のきけない人が物を言うようになったので、群衆は不思議に思った。  15  その中のある人々が、「彼は悪霊のかしらベルゼブルによって、悪霊どもを追い出しているのだ」と言い、  16  またほかの人々は、イエスを試みようとして、天からのしるしを求めた。  17  しかしイエスは、彼らの思いを見抜いて言われた、「おおよそ国が内部で分裂すれば自滅してしまい、また家が分れ争えば倒れてしまう。  18  そこでサタンも内部で分裂すれば、その国basileiaはどうして立ち行けよう。あなたがたはわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出していると言うが、  19  もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。  20  しかし、わたしが神の指によって悪霊を追い出しているのなら、神の国basileiaはすでにあなたがたのところにきたのである。(ルカ11章14-20節)

ベルゼブル論争」 とも呼ばれるこのエピソードでイエスは、ご自身が悪霊を追い出しているのは神の国が到来している証拠であると語っています(20節)。しかし、このエピソードではもう一つ興味深い点があります。イエスの悪霊追い出しを批判する人々は、イエスがベルゼブルという強力な悪霊の力を使って別の悪霊を追い出しているのだと邪推しました。それに対してイエスは、サタンの国は内部分裂しては立ち行かないという論理を使って、その批判に反論されました。18節でサタンの「国」と訳されている言葉は、神の「国」と同じbasileiaというギリシア語が使われています。つまり、このエピソードが示しているのは、イエスが悪霊を追い出す行為は、神の王国がサタンの王国を攻撃していることの現われであるということです。

ルカ福音書はサタンの王国がどのように地上を支配しているのかについて、非常に興味深い視点を提供しています。ルカ福音書のはじめの数章において、記者のルカはナラティヴの区切りごとに、物語の展開上重要なできごとがいつ起こったかということを、時の支配者に言及しながら述べています。これを順番に見ていきましょう。

ユダヤの王ヘロデの世に、アビヤの組の祭司で名をザカリヤという者がいた。その妻はアロン家の娘のひとりで、名をエリサベツといった。 (ルカ1章5節)

ルカ福音書1章の冒頭でルカはバプテスマのヨハネの誕生物語を、前1世紀末のパレスチナの歴史の中に位置づけています。ここに登場するヘロデは「大王」とよばれるヘロデで、前37年から前4年の間、ユダヤを統治しました。ローマ人の後ろ盾によって王となった彼は、終生ローマに忠誠をつくしました。ヘロデの王国は名目上は独立国でしたが、実際にはローマの傀儡政権であることは、誰の目にもあきらかでした。したがって、一見純粋にユダヤ的な物語に思える(実際ここではルカはギリシア語訳旧約聖書を模した文体を使っています)福音書冒頭の記述においても、「ユダヤの王ヘロデ」という一言は、ローマ帝国によるユダヤ人の支配という現実を垣間見せてくれるのです。

1  そのころ、全世界の人口調査をせよとの勅令が、皇帝アウグストから出た。 2  これは、クレニオがシリヤの総督であった時に行われた最初の人口調査であった。(ルカ2章1-2節)

2章のイエスの生誕物語を語り始めるにあたり、ルカはふたたび当時の支配者に言及しますが、今度はユダヤではなく、全ローマ帝国にまで地理的視野が拡大されています。ここで登場する皇帝アウグストはローマ帝国の初代皇帝で、前27年から後14年の間地中海世界を統治しました。

ここでルカが皇帝アウグストを、「全世界」を支配する(と称する)存在として描いていることに注意しましょう。ここにあるのは、シリアの総督クレニオに対する言及といい、住民登録のための勅令といい、非常に政治色の濃い記述であり、皇帝を頂点とするローマの支配が地中海世界全域に及んでいたことを示しています。「全世界」という表現はもちろん誇張であって、実際には地中海沿岸地域(それでも広大な領域ですが)を指しているわけですが、理念としては全世界を支配したいという、ローマの傲慢さを示しているともいえるでしょう。(イエスの降誕物語の政治的メッセージについては、本ブログの「本当は政治的なクリスマス物語」を参照ください。)

1  皇帝テベリオ在位の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟ピリポがイツリヤ・テラコニテ地方の領主、ルサニヤがアビレネの領主、  2  アンナスとカヤパとが大祭司であったとき、神の言が荒野でザカリヤの子ヨハネに臨んだ。 (ルカ3章1-2節)

3章でルカは、イエスの宣教活動の先触れとなる、バプテスマのヨハネの宣教活動について語りはじめますが、ここでもまた年代的記述がなされています。これはこれまでのルカのナラティヴに登場した中でもっとも詳細に書かれた年代記述であり、7人の支配者が登場します。

テベリオはローマ帝国の第二代皇帝で、後14年から37年まで統治しました。ポンテオ・ピラトは後26年から36年までユダヤの総督でした。ここに出てくるヘロデは福音書の受難物語にも登場するヘロデ・アンティパスのことで、ガリラヤとペレヤの四分領主でした(前4年-後39年)。アンティパスと同じくヘロデ大王の子であるピリポはパレスチナ北東の地域の四分領主でした(前4年-後34年)。ルサニヤはダマスコの北方にあったアビレネという地域の国主でした。1章と2章の年代記述とはことなり、ここでルカはさらにユダヤの宗教的指導者たち、すなわちアンナスカヤパの名を挙げています。

ここに見られる支配者のリストはいろいろな意味で総合的であるといえます。1章ではユダヤの王が、2章ではローマ皇帝とシリヤ総督がそれぞれ言及されていたわけですが、3章ではその両方、つまりローマ人の支配者とユダヤ人の支配者の両方がリストにふくめられています。さらに、王や総督といった政治的支配者だけでなく、大祭司という宗教的支配者も言及されているのです。

古代の人々は現代人のように政治と宗教を明確に区別していませんでした。ローマ皇帝は「最高神祇官」という宗教的役職を兼ねていましたし、ユダヤの大祭司もサンヘドリンの議長として政治的影響力を持っていました。さらに、ユダヤ総督は大祭司を任命・解任する権利を持っており、ユダヤ教の組織そのものがローマに従属していたことを示しています。つまり、ルカがここで描きだしているのは、ローマ皇帝を頂点にした、政治的・宗教的支配者を含めたこの世の権力構造なのです。

ところで、ルカはなぜ福音書の冒頭でこのような形で時の権力者に言及したのでしょうか?そして、このことは、この世を支配しているサタンの王国、さらにそこに侵攻してくる神の国とどう関わっているのでしょうか?次回はそれについて見て行きたいと思います。

(続く)

 

 

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